灯りをともして


ご予約があってもなくても

毎日お店に灯りをともす。

必要な誰かが、いつでもここに来られるように。

訪れてくださった方が、日常の喧騒から離れ、ホッと一息ついて、体も心もほぐれるように。

私や、他のお客様との他愛ないお喋りで、リフレッシュできるように。

お客様が来ても来なくても、ここに居て

料理をしたり、インスタに写真をアップしたり

こうしてブログを書いたりして、時を過ごしている。

その時私が座るのは

カウンター席後方の、2名様用のテーブル席。

そこからは、店内全体を見渡すことができる。

バックカウンターの棚には、間接照明を受けて控え目に輝くワイングラスたちが並び

その中央には生花が飾られ

その左横のボルドーカラーの壁紙を張った壁には

おそらくミモザであろう、黄金色に輝く花が描かれた絵画がかかっている。

カウンターの上には、均等な幅で置かれた、紙おしぼりの包み。

灯りは暗めのダウンライト、音楽はモダンジャズ。

入口ドアから入って一番奥の4名席には、ガラス製のアンティークのペンダントライトがかかり

その光の反射が周りの壁にレースのような模様を映し出している。

店内の配色も、置かれている椅子やテーブルも、すべてがほどよく調和している。

そうやって店内をゆっくり見回していると、慎ましくも私の背丈に見合ったお店が出来上がったと

一人悦に入る。

あとはお客様をお迎えするばかり。

家でも職場でもない、もう一つの、よりどころとなる場所があれば、ずいぶんと人は気楽になれるのでは?

私の店をそんな風に使ってもらえたら、私がお店を始めた意味は十分あったと、言えるだろう。

だから私は毎日、ここに居る。ここで、ワインと共に、誰かの来店を待ち続ける。

お客様が来ても来なくても、灯りをともし続ける。


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